
日経平均株価が一日に1500円、2000円と乱高下し、スマートフォンの画面上で数字が踊る。
円安とインフレは加速の一途をたどり、新政府の発足以降もその濁流を止める兆しは見えない。
都心での住宅購入はもはや「無理ゲー」と化し、かつての「中流」という概念は砂上の楼閣のように崩れ去った。
こうした先行きの見えない時代、社会全体を覆っているのは、防衛本能に近い「保守化」の波である。
政治は現状維持を叫び、投資の世界では将来性のある企業を育てる視点よりも、目先のニュースに飛びつき利ザヤを稼ぐ「投機」という名のマネーゲームが主流となった。
そしてその波は、本来、時代の先鋭であるべきアートの世界にも、色濃く影を落としている。
先日開催されたアートフェア東京の会場を歩きながら、私はある種の危惧を覚えずにはいられなかった。
会場に並ぶのは、換金性が高く、確かな手触りを持つ骨董や工芸品が主役の座を占めている。
一方で、思考の深淵に触れるようなコンセプチュアルな現代アートや、痛烈な社会批評を孕んだ先鋭的な展示は影を潜めた。
なぜか。
それは、展覧会という場での純粋な「鑑賞」による販売が苦戦する中、コレクターが確実に資産として計算できる「失敗しない買い物」を求めているからだ。
作り手も売り手も、そして買い手も、誰もが正解を求めて縮こまっている。
だが、売れるものだけが整然と並ぶその光景は、表現の死、あるいは文化の熟成という名の「停滞」を意味してはいないか。
現在、日本の人口における年齢の中央値は50歳を超えた。
社会の半分以上が50代以上というこの国において、価値観のOSは放っておけば保守的が当たり前へと自動的に書き換えられていく。
私たちはこのまま、過去の遺産を食いつぶしながら緩やかな衰退を待つのか。それとも、新しい感性を育てるために血を流す覚悟があるのか。今、その二択を突きつけられている。
ここで、イーロン・マスクが描く未来予測を補助線として引いてみたい。
彼は「10年後、お金はほとんど意味をなさなくなる」と語る。
AIとロボットがあらゆるモノの生産コストを極限まで下げ、人件費という概念が消滅した「ポスト希少性」の世界。
もしこの予測が一部でも的中するならば、現在のマネーゲームは究極の虚無に帰結する。
数字上の富が意味を失った後、人間に残されるものは何か。それは、AIが決して代替できない不合理な情熱や深い共感、そして人間であることの証明としての物語である。
未来の経済構造において、アートは「所有する資産」から、混迷する時代を生き抜くための「問いを探す装置」へと変質するだろう。
答えがネット上に溢れる時代だからこそ、価値を持つのは「正しい答え」ではなく「鋭い問い」そのものなのだ。
私たちが今、真に学ぶべきは、資産をどう守るかではなく、いかにして「価値の源泉」に投資するかである。
日経平均の乱高下に一喜一憂し、投機で得たあぶく銭を抱えて震えるのは、もう終わりにしよう。
その資金の一部を、才能がありながらも日々の糧に事欠く若きアーティストへと還元してみてはどうだろうか。
彼らの活動を「推す」という行為は、単なる慈善事業ではない。
それは、日本という国が保守性に飲み込まれるのを防ぐための、最も切実で先鋭的な未来への投資である。
才能あるアーティストが制作を続けられる環境を作ることは、社会貢献であり、文化の醸成であると同時に、将来的に「代替不可能な価値」を持つ資産を育てることに他ならない。
AIが完璧な絵を描き、ロボットが精巧な像を造る未来において、最後に残るのは剥き出しの人間性の物語だけだ。
一人のアーティストの成長を支え、その軌跡を共に歩む。その過程で得られる「意味」と「感動」こそが、インフレにも円安にも左右されない、あなた自身の人生における真の富となるはずだ。
そこで私たちが選ぶべきは、すでに名前の通った、いわゆる「買って損をしない」無難な作家の作品ではない。
真にエキサイティングな投資とは、今はまだ無名で、次に何をしでかすか分からない、剥き出しの牙を持った若い才能に賭けることにある。
一人の大御所の作品に投じる資金があるならば、その一部を、未来を模索する十人、百人の若きアーティストたちに分散して投じてみてほしい。
一見、効率の悪い「散財」に見えるかもしれないが、これこそが現代における最もクリエイティブな「推し活」であり、文化の耕作である。
彼らが食べていけない現状を、ただの自己責任として切り捨てる社会に未来はない。
株価の上下に一喜一憂して得た資金を、彼らのキャンバスや絵具、あるいは思索のための時間へと変える。
その行為は、単なる金銭の移動を超え、あなた自身が新しい時代の「共犯者」になることを意味する。
数年後、あなたが支援した若者が世界を揺るがす表現を手にしたとき、その作品は金銭的なリターンを遥かに凌駕する歴史の一片としての価値を帯びるかもしれない。
【tagboat Art Fair】
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